
VMIとは?在庫管理におけるメリット・導入するためのノウハウを解説
目次[非表示]
- 1.VMIとは
- 1.1.VMIとJITの違い
- 1.2.VMI倉庫について
- 1.3.VMIの導入が始まった時期
- 2.VMIを導入する業者・顧客のメリット
- 3.VMIを導入する業者・顧客のデメリット
- 4.VMIを導入するときの注意点
- 4.1.情報共有がしやすい環境を構築しなければならない
- 4.2.システムの導入費用を確保しておく
- 4.3.契約内容を明確化する
- 4.4.専用倉庫を準備しておく
- 5.まとめ
「VMIがどういった管理方法なのか知りたい」
「VMIを導入するメリット・デメリットを知りたい」
当記事は、このような悩みを持つ方に向けて書いています。
在庫管理は、物流業界において考えなくてはいけない課題の1つです。
適切な在庫管理を行うことで、業者と顧客が効率良く作業を進められるようになります。
そこで注目されている在庫管理方法が「VMI」です。
当記事では、VMIの詳細から在庫管理におけるメリット・デメリットなどを詳しく解説します。
VMIを導入するノウハウを理解できるので、ぜひ参考にご覧ください。
VMIとは
VMI(Vendor Managed Inventory)とは、業者(ベンダー)が顧客(バイヤー)の代わりに在庫管理を行う方法です。
業者と顧客が在庫レベルや在庫ポリシーを決定し、業者が主導となって在庫管理を行います。
VMIの管理方法が始まるまでは、顧客による商品の管理・発注が一般的でした。
しかし、こちらの方法では顧客が商品の管理作業をしなければならず、不要な在庫を抱えたり販売機会を損失したりと問題が発生していました。
VMIは業者が取り決めによって在庫管理を行うため、顧客の負担が大幅に減ります。
業者は決定されたルールのもと、顧客側の在庫状況や販売見込みの情報を参考にしながら商品を供給します。
業者側も不要な輸送がなくなるので、CO2排出量削減によってサステナビリティへ貢献できるでしょう。
VMIとJITの違い
VMIと類似する手法として「JIT(Just In Time)」があります。
JITとは、必要なものを必要なときに必要なだけ生産・供給する方法です。
在庫削減のために利用される方法となっており、物流業界や製造業界で取り入れられています。
VMIとの違いは、どちらが主導になって在庫管理を行うのかという点です。
VMIは業者側が在庫管理を行いますが、JITは顧客側が商品の発注・管理を行います。
在庫削減をする点では同じ管理手法ですが、どちらが主導権を握るのかに違いがあることを理解しておきましょう。
VMI倉庫について

VMI倉庫とは、業者が商品の在庫を保管する倉庫のことです。
一般的には顧客側が倉庫を用意しますが、VMIは業者側が商品の保管場所を用意しなくてはいけません。
例えば薬品メーカーの工場に向けて、各業者が個別に小口納品した原料をVMI倉庫に集めれば在庫状況と納期を可視化できるようになります。
結果的に荷物を受け取る車両台数を削減できるため、CO2排出を抑えられます。
実際に三井倉庫株式会社は、キリンホールディングス株式会社とキリンビバレッジ株式会社との共同によって専用のVMI倉庫を用意しています。
輸送効率を大幅に向上できるので、VMI倉庫を活用する流れが注目されているのです。
VMIの導入が始まった時期
VMIは、1980年代にアメリカのウォルマートとP&Gの協働によって始まりました。
ウォルマートは商品の販売状況を改善するために、P&Gに在庫状況や売り上げ状況、価格、販売実績データなどを共有しました。
P&Gはウォルマートから共有された情報をもとに、商品の在庫管理や販売予測がスムーズにできるようになったのです。
結果としてP&Gは販売予測精度を上げることに成功し、効率良く商品の生産・補充が可能になりました。
コスト削減や販売機会損失の防止にもつながり、世界的にも効果があることが実証されたのです。
日本でも昔から薬売りが同じような方法を取り入れており、家庭に薬箱を無料で置くことで消費された分を薬売りが補充するという手法があります。
現在ではコンビニエンスストアの小売業でも採用されているため、効率性が高い方法として取り入れる企業が増えています。
VMIを導入する業者・顧客のメリット

VMIを導入すれば、業者と顧客のどちらにもメリットがあります。
こちらでは、業者と顧客に分けて得られるメリットについて解説します。
これからVMIを取り入れようと検討している方は、ぜひチェックしてください。
【業者側】生産効率を向上できる
VMIなら顧客の在庫・販売状況をリアルタイムで把握できるため、商品の生産数や販売予測を立てやすくなります。
必要な分だけ商品を生産できるため、業者側の効率性が向上します。
商品の在庫量が明確になれば、業者が不要な在庫を抱える必要もありません。
生産・納品計画を立てて効率良く進める点は、業者にとっても良いメリットといえるでしょう。
【業者側】在庫切れの心配がなくなる
VMIの手法を取り入れることで、業者は顧客から商品に関連するデータを共有してもらえます。
在庫状況やPOSといった情報をデータ共有されるため、業者は販売予測を参考にしながら必要な分だけで在庫を生産できます。
在庫切れになる心配がなくなることから、顧客が販売機会を失ってしまう心配もありません。
顧客の店頭に商品の在庫がなくなるリスクを防止できるため、業者にとってもメリットが大きいです。
【顧客側】生産の遅延防止につながる

VMIなら必要なタイミングで商品が納品されるため、顧客側が生産の遅延を起こすリスクがなくなります。
顧客側が商品の管理・発注をする場合、必要な部品が欠品して生産が遅れてしまう可能性も高いです。
VMIでは顧客が業者に最新の在庫状況や販売予測などのデータを共有するため、必要に応じて部品を納品してもらえます。
生産の遅延が発生すると商品の販売機会を損失してしまうため、防止できる点は顧客のメリットといえるでしょう。
【顧客側】在庫管理の必要がなくなる
VMIは業者側が商品の在庫管理を行うため、顧客側の負担を減らせます。
数多くの部品や材料を調達するメーカーはコストがかかりますが、VMIであれば業者側が在庫を管理してくれるので調達業務を削減できます。
VMIにおいて商品の所有権移転は、業者と顧客の取り決めによってタイミングが異なります。
業者側が商品の出荷や販売、使用したタイミングで顧客側に所有権が移転されることもあれば、逆も存在します。
しかし、一般的には商品が倉庫から発送されるまでは業者側に所有権があるため、顧客側にとってもメリットは大きいです。
VMIを導入する業者・顧客のデメリット
VMIを導入することでメリットは大きいですが、業者と顧客にとって少なからずデメリットも存在します。
良い点だけでなく悪い点も理解しておくことで、VMIを導入すべきか判断できるようになります。
導入後に後悔しないためにも、ぜひチェックしておいてください。
【業者側】データ分析が必要になる

VMIでは、顧客からの販売状況や在庫状況などのデータを共有してもらいながら、業者が最適なタイミングで商品の生産・納品をしなくてはいけません。
そのためにはデータ分析が必要になるため、業者側は精度の高い予測スキルが求められます。
顧客から送られてきたデータを分析するには、専門的な知識や経験も必要です。
社内にノウハウがある従業員がいなければ、データ分析の教育体制を整える必要があります。
現場にVMIの知見がなければ、業務が複雑化してITコストも発生してしまいます。
データの管理体制が整っていなければ求める成果を得られない点は、業者側のデメリットといえるでしょう。
【業者側】情報の精度を求められる

顧客から情報を共有されるタイミングは企業によって異なるため、精度の高さが求められます。
顧客との信頼関係を築けていない場合、商品の在庫・販売状況を適切に把握できなくなってしまいます。
不要な在庫を抱える原因にもなるので、業者側の負担が大きくなる恐れがあるのです。
VMIを実施するときは顧客との信頼関係を築いて、情報共有するタイミングや所有権の移転などについて取り決めをしておくことが大切です。
パソコンやスマートフォンなどを利用した業務も増えることから、情報管理が苦手な企業にはデメリットに感じるでしょう。
【顧客側】ITシステムの導入コストがかかる
顧客側は、VMIを実施するために商品の在庫・販売状況などのデータを管理するITシステムを導入しなければいけません。
ITシステムがない状態でVMIを実施すると、データ管理が難しくなってしまいます。
ただし、規模によってはITシステムの導入コストが大きくなるため、資金が少ない企業は取り入れることが困難です。
そのため中小企業にとっては、ITシステムの導入コストがかかる点はデメリットとなるでしょう。
【顧客側】在庫の流れを共有する必要がある
VMIは業者が在庫管理をしますが、顧客側は商品の販売状況に合わせて在庫数を把握しておく必要があります。
例えばキャンペーンなど商品を多く販売する機会があった場合、通常の納品数では在庫が足りなくなってしまう恐れがあります。
状況に応じて柔軟に在庫の流れを共有しなければ、販売機会の損失につながってしまうのです。
しかし、間違った指示を業者側に出してしまうと、信用を失ってしまう可能性も高いです。
在庫の売れ行きを把握しながら業者へ共有しなければいけない点は、手間をかけたくない顧客にはデメリットとなります。
VMIを導入するときの注意点
VMIを導入するときは、以下のような点に注意しておきましょう。
情報共有がしやすい環境を構築しなければならない
システムの導入費用を確保しておく
契約内容を明確化する
専用倉庫を準備しておく
それでは詳しく説明します。
情報共有がしやすい環境を構築しなければならない
VMIは、顧客がPOSデータや商品の在庫・販売データなどを業者へ共有することで、適切な在庫管理ができるようになります。
情報共有の環境が構築できていない場合、業者が不要な在庫を抱えたり顧客が販売機会を損失したりします。
スピーディに情報共有できる環境を構築することで、状況に合わせた在庫管理が可能です。
例えば両者が対応するITシステムを構築すれば、リアルタイムで商品の在庫状況を把握できます。
ITシステムの導入にはコストがかかるため、両者が負担する費用などを決定してからVMIを実施するようにしましょう。
システムの導入費用を確保しておく

VMIを実施するには、ITシステムの導入が必要不可欠です。
しかし、前述でも説明した通り、ITシステムの導入には必要が必要です。中小企業の場合、ITシステムの導入資金をどのように確保するのかが課題になります。
また、ITシステムを社内で使いこなすためにも、教育環境を整えておくことも大切です。
ITシステムを提供する企業によっては教育サポートが用意されていることもあるので、教育体制が整っていないときは相談しましょう。
契約内容を明確化する

業者と顧客がVMIを実施するときは、契約内容を明確化しておくようにしましょう。
契約内容を細かく決めておかなければ、VMI実施後にトラブルが発生する恐れがあります。
情報の共有方法はもちろん商品の所有権を移転するタイミング、在庫の補償問題など細かな取り決めをしておきましょう。
専用倉庫を準備しておく
VMIを実施する場合、業者側が商品を管理する専用倉庫が必要です。
専用倉庫がなければ商品の管理が難しくなり、VMIの継続ができなくなります。
企業によって規模が異なるため、顧客に必要な商品の在庫状況を考えて倉庫を用意しなくてはいけません。
専用倉庫は業者と顧客が共同で用意することが多いですが、すでに業者が倉庫を保有している場合はそちらを使用します。
そのためVMIを実施するときは、事前に専用倉庫を準備しておきましょう。
まとめ
今回は、VMIの詳細から在庫管理におけるメリット・デメリットなどを詳しく解説しました。
VMIは業者が顧客の代わりに在庫管理をする方法であり、国内でも注目を集めています。
不要な在庫を抱えたり販売機会を損失したりする問題も解決するため、業者と顧客のどちらにもメリットがあります。
ただし、VMIを実施するにはITシステムの導入やデータ分析が必要になるので、理解した上ではじめることが大切です。
ぜひ当記事で紹介した内容をもとに、VMIの実施を検討してください。

