
運送業における労働基準法の改正ポイント|取り組むべき課題と解決策
こんにちは。物流に関する知識をまとめたメディア「ピックゴー物流コラム」編集部です。
働き方改革関連法による労働基準法改正のなかで、運送業界最大の山場ともいえる「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」の適用まで約1年となりました。いわゆる「2024年問題」への対応に苦慮されている企業ご担当者様もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、次の3点をご紹介します。
- 労働基準法改正の背景と内容 
- 法改正が業界に与える影響 
- 法改正に向けて運送業界が取り組むべき課題と解決策 
解決策として具体的な方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
労働基準法の改正の背景

働き方改革関連法は、過労死防止や人手不足の是正などを目的に2019年から段階的に施行されました。中でも運送業に影響が大きいのが、「時間外労働の上限規制」です。
- 残業時間の上限規制強化 
- 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し 
- フレックスタイム制の見直し 
導入が難しい制度が多い一方で、労働時間は規制されるため、人材不足が慢性化している運送業界においては多くの問題を生む要因となっています。これがいわゆる「2024年問題」です。
運送業に関連した労働基準法の改正内容

ここでは、運送業を対象としている、もしくは運送業界に大きな影響を及ぼす労働基準法の改正内容についてご紹介します。
なお、本文中の時間外労働とは基本的に「1日8時間、週40時間を超えて労働させること」を指します。
時間外労働の上限規制の導入
運送業界にとって最大の改正が、時間外労働の上限規制導入です。
改正前は特別条項付き36協定の締結により、時間外労働を無制限でさせることができたため、長時間労働の原因となっていました。
改正後の時間外労働の上限は下記の通りになります。
- 一般則は月45時間、年360時間 
- 特別条項付き36協定締結により年720時間 - ただし、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2~6か月平均は80時間以内でなくてはならない 
- 自動車運転者は特別条項付き36協定締結時で年960時間 - ※2.のただし書き部分は適用されない 
時間外労働の割増賃金率の引上げ
2023年4月1日より、中小企業における月60時間を超える時間外労働に対する賃金割増率の下限が、これまでの25%から50%に引き上げられます。
多くの企業にとっては、事実上労働者1人当たりの使用限界時間を設定された形になります。長時間労働が大きな問題となっている運送業界にとって、是正への大きなきっかけになりうる法改正です。
年5日の年次有給休暇取得の義務付け
2019年4月1日より、全企業において、年間10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については企業が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
運送業の場合、残業や休日出勤で稼ぐ傾向が強く、有給休暇を取得すると賃金が少なくなるため、有給休暇取得率が著しく低いのが現状です。
有給休暇は労働者が自由に取得するもので、企業は本来取得に干渉することはできませんが、年5日に限って企業に取得日を指定できる権利を与え、有給休暇を「確実に」取得させる環境を整えました。
ただし、企業が取得日を指定できるのは労働者が取得日を指定しない、もしくは有給休暇を取得しようとしない場合に限られます。労働者が取得日を指定した場合は、原則として労働者の希望通りに有給休暇を取得させなければなりません。
労働基準法の改正が運送業界に与える影響

運送業界に関連した労働基準法の改正内容がわかったところで、ここでは今回の改正が運送業界に与える影響についてご紹介します。
運送会社の売上低下
今回の労働基準法の改正により、運送会社の売上が低下する可能性があります。
労働時間に上限が設けられるということは、ドライバーの稼働時間や引き受けられる仕事量に明確な限界ができることになります。
ドライバーの稼働時間や仕事量が現状よりも減少する運送会社は、売上低下を避けられません。
労働時間の減少により人件費削減の効果はありますが、それよりも売上の減少額の方が大きければ、賃料や減価償却費などの固定費の負担が重くなることが懸念されます。
トラックドライバーの収入減少
労働基準法の改正により、トラックドライバーの収入が減少する可能性があります。特に大きな影響となるのが、時間外労働の上限規制による稼働時間の制限です。
これまで残業で収入を補っていたドライバーにとって、稼働時間の減少は割増賃金や歩合給の減少に直結します。労働時間が減ることで家族との時間を増やせる一方、収入減による生活への不安を抱える人も少なくありません。
また、ドライバーは生活リズムが不規則なため副業が難しく、減った収入を補う手段が限られています。勤務先の業績悪化が重なれば賃上げも期待しにくく、長時間労働に依存していた層ほど影響が大きくなるでしょう。
荷主企業が支払うコストの上昇
労働基準法の改正による売上減への対策として、運賃を引き上げる運送会社が増えると考えられます。利益を確保するための手段として、運賃の値上げは最も効果的で取り組みやすいからです。
しかし、運賃の値上げは荷主にとってコスト増につながります。荷主は運賃以外にも多くの費用を管理しており、価格変動には敏感です。
また、運送会社は数多く存在するため、相場とかけ離れた金額では顧客を失うリスクがあります。地域や業種ごとの水準を把握し、同業他社の動向を調べながら適正価格を設定することが重要です。
改正労働基準法への対応に向けて、運送業界が取り組むべき課題と解決策

改正労働基準法が運送業界に与える影響を理解したところで、ここからは運送業界が取り組むべき課題と解決策についてご紹介します。
労働力不足の解消
改正労働基準法によって1人の1日当たりの仕事量が制限されることで、現在の人員では労働力不足に陥る企業が増えることが予想されます。すでに労働力不足が慢性化している運送業界。今よりさらに労働力が不足したら、業務が成り立たない企業も出てくるでしょう。
労働力不足の解消方法は人材の確保です。
- 募集広告を出す 
- 既存従業員からの紹介 
- パート・アルバイトの正社員登用 
以上のような方法を活用し、1人でも従業員を増やす必要があります。同時に、企業は賃金だけでなく、福利厚生の見直しや複数の働き方を用意するなど、全体の待遇を再確認し、同業他社と同水準以上の労働条件を整えなければなりません。
【出典】「参考資料2 改善基準告示見直しについて(参考資料)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000831729.pdf
長時間労働の是正
トラックドライバーの労働時間は、全産業の平均より約2割長いといわれています。
自動車運転者向けの時間外労働の上限規制には、他産業との格差を是正しつつも、他産業に比べて規制を緩くすることで主たる収入源である残業代を一定額確保し、収入低下を抑える狙いがあります。
近年はお金(=賃金)と同時に時間を大切にする労働者も増えてきました。このようなニーズに応えるためにも、長時間労働は早急に是正する必要があります。
取り組み内容によっては、働き方改革推進支援助成金など、一定の補助を受けられる場合もあります。コスト削減のために可能な限り活用したい制度です。
【出典】「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(経済産業省・国土交通省・農林水産省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/monoinfoservice/sustainablelogistics/pdf/00102_00.pdf
業務効率の向上
労働基準法の改正により、業務に充てられる時間が制限されるため、成果を出すには作業効率を向上させなければなりません。
一例として、スピーディーな配車管理が挙げられます。
荷主は安く、早く、安全・確実に荷物を運んでくれる運送会社を求め、多くの運送会社に見積りや問い合わせをします。
比較検討は当然しますが、あまり時間をかけられないこともあり、使う運送会社を早く決めたいという心理が働きます。
適切な見積りと明確な運行スケジュールを素早く荷主に提示・交渉できる配車担当者が、作業効率アップのために欠かせない存在になります。
適正取引の推進
運送業界が取り組むべき課題には適正取引の推進もあります。
同業他社より料金を安くして仕事を取る価格競争の時代はもう終わりです。利益を確保できない料金で行う業務に価値はないことを理解し、利益が出る適正な運賃収受を運送会社が自らのために推進しなければなりません。
同時に、提供するサービスの向上に努め、顧客に高いと思われない運賃にしなくてはなりません。
運送業者の改正労働基準法への対応には「ピックゴー」の利用がおすすめ
労働時間の抑制と人手不足を両立するためには、効率化と外部リソースの活用が欠かせません。
ピックゴーはその両面を支える実践的な手段として、法改正時代の物流現場を支援します。

ピックゴーの概要
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ピックゴーの利用をおすすめする理由
ピックゴーの利用をおすすめする大きな理由には、以下の3つがあります。
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ピックゴーを利用すると運賃を最適化できます。なぜなら、ピックゴーでは希望する金額で仕事を受注できるからです。
2トン以上の案件では入札制度を採用しているので、荷主と直接交渉することなく希望額、すなわち最適な運賃で案件を獲得でき、仲介業者を挟まないことで経費を節約でき、結果として売上を最大化できます。
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ピックゴーは仕事を始めるまでの手続きが簡単です。個人事業主の場合は以下の4ステップで仕事を始められます。
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- 案件を探す 
- 希望案件に応募→成約で仕事開始 
もちろん、登録は無料です。
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ピックゴーでは法人向けに緊急配送・即日配送・定期配送と状況に応じた配送を展開しています。常にニーズを考え、それに応える努力の積み重ねが、案件を獲得する仕組みを支えています。
(注)掲載している数値は2023年3月時点のものです。
法改正をチャンスに、物流の新しい仕組みへ

2024年問題として注目される労働基準法改正は、運送業界にとって大きな転換点です。長時間労働の是正や有給休暇の取得義務化など、ドライバーの働き方を見直す契機になる一方で、
人手不足やコスト上昇といった新たな課題も浮き彫りになりました。
しかし、こうした課題は「効率化」と「デジタル化」を進めることで乗り越えられます。とくに、配送業務の最適化や空車時間の削減を実現できるピックゴーのような配送プラットフォームは、
人手に頼らずスピーディーに配送を成立させる仕組みとして、多くの企業から注目されています。
法改正に振り回されるのではなく、それをきっかけに“持続可能な物流体制”を築くことがこれからの時代のカギです。ドライバー・荷主・運送会社それぞれが無理なく連携できる環境を整え、
ピックゴーのような仕組みを活用しながら、より良い働き方と物流の未来を実現していきましょう。


