
フィジカルインターネットとは?物流のメリット・実現方法を解説
目次[非表示]
- 1.フィジカルインターネットとは
- 2.フィジカルインターネットのロードマップについて
- 3.フィジカルインターネットが注目される背景
- 3.1.インターネット宅配依頼の増加
- 3.2.物流システムの効率性
- 3.3.ドライバーの人員不足
- 4.フィジカルインターネットを導入する3つのメリット
- 5.フィジカルインターネットを導入するための課題
- 6.フィジカルインターネットを実現するためにやるべきこと
- 6.1.情報共有システムを構築する
- 6.2.荷物の大きさを統一する
- 7.フィジカルインターネットの導入事例
- 7.1.株式会社セブン-イレブン・ジャパン
- 7.2.ヤマトグループ総合研究所
- 8.海外におけるフィジカルインターネットの事例
- 9.まとめ
こんにちは。物流に関する知識をまとめたメディア「ピックゴー物流コラム」編集部です。
物流業界では、新たな取り組みとして「フィジカルインターネット」が注目を集めています。フィジカルインターネットは物流需要の増加に対応できる方法として、将来的な実現が検討されています。
しかし、フィジカルインターネットについて知らない方は「どのような物流方法なのかわからない」、「実現するためにはどうすればいいか不明」といった悩みもあるでしょう。
当記事では、フィジカルインターネットの詳細から物流業界のメリット、実現方法について詳しく解説します。フィジカルインターネットの実現によって得られる効果を理解できるので、ぜひ参考にご覧ください。
フィジカルインターネットとは

フィジカルインターネットとは、トラックと倉庫が最適なスペースを確保して稼働率を向上させる物流システムです。トラックの積載スペースと倉庫の保管スペースを情報共有することで、少ない台数で荷物を運べる方法となっています。
次世代型の物流システムとなっており、国内でも将来的に実現される方法として注目されています。トラックを少ない台数で運べることから、ドライバーの人材不足低下やCO2の排出量増加といった課題を改善することが可能です。
経済産業省と国土交通省は、2022年にフィジカルインターネットのロードマップを発表し、2040年の実現を目標として目指しています。
フィジカルインターネット・ロードマップを取りまとめました!|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304005/20220304005.html
フィジカルインターネットとインターネットの関係性・仕組み
フィジカルインターネットは、名前にもある通りインターネットの仕組みを物流に利用しています。インターネットの通信はパケット(データ)を一区切りごとに分けて送受信される仕組みとなっており、その間だけ回線が使われます。
複数の通信データを1つの回線で遅れることから、効率性が高い方法となっています。物流業界では、現在荷物の出し手1社がトラック1台を出荷するため、積載率が低い状態で荷物の受け手に届けています。
フィジカルインターネットなら「PIノード」という区間を通じて荷物が運ばれるので、トラックの積載率を向上できるのです。PIノードとは、複数の物流企業が荷物を集められる物流施設を指します。
インターネット環境のように効率良く荷物を運ぶことができ、企業にとってもメリットが大きいです。
フィジカルインターネットのロードマップについて
フィジカルインターネットは、経済産業省と国土交通省が2040年までに実現できるロードマップを発表しました。
ロードマップは物流に関わる業界が横断的に実施する取り組みとなっており、以下の6つの項目で整理されています。
ガバナンス
物流・商流データプラットフォーム
水平連携
垂直統合
物流拠点
輸送機器
上記項目において物流資材の標準化・シェアリング、サプライチェーンマネジメント、意識変革などを段階的に行うことで、2040年までにフィジカルインターネットの実現を目指しています。
フィジカルインターネットが注目される背景

フィジカルインターネットが注目される背景として、以下のような問題が挙げられます。
インターネット宅配依頼の増加
物流システムの効率性
ドライバーの人員不足
それでは詳しく解説します。
インターネット宅配依頼の増加
近年インターネット通販の普及によって、国内の物流需要が増加傾向にあります。2020年には新型コロナウイルスの発生により、消費者の不要不急の外出制限がありました。
結果的に物流会社の需要率はアップしましたが、時間指定配達やロットサイズの縮小などによってトラックの積載率が低下する原因となっています。
フィジカルインターネットなら効率の良い配送ができるため、国内の物流業界が抱える課題解決として注目されているのです。
物流システムの効率性
運現在の物流システムは荷物の出し手1社がトラック1台を出荷するので、積載率が低い状態で荷物の受け手に届ける流れとなっています。
こちらの方法は消費者のニーズに対応できるメリットがありますが、トラックの空きスペースが増えるので配送回数とドライバーの人数が増えるデメリットもあるのです。
フィジカルインターネットなら複数の荷物が混載されて運ばれるため、物流の効率性が向上します。
消費者のニーズに応えながら効率良く発送できる点は、物流業界で注目される背景の1つといえるでしょう。
ドライバーの人員不足
デジタル化が進んだことにより、配送の負担が増えたことでドライバー不足も課題となっており、改善策を検討する企業も増えています。なぜ物流業界からドライバーが不足しているのかというと、宅配便が増えたことで負担が大きくなったことが主な原因です。
ドライバーの人材不足が進むと、結果的に1人の対応範囲が広がって体力的な負担が増えてしまいます。この問題を放置した場合、2030年には7.5兆円〜10.2兆円の経済損失が発生すると言われています。
物流は生活を支える重要な役割があるため、ドライバー不足は深刻な問題です。そのためフィジカルインターネットは、政府が実現をするためのロードマップを作成して問題解決へと取り組んでいるのです。
フィジカルインターネットを導入する3つのメリット

フィジカルインターネットを導入することで、以下のような3つのメリットがあります。
効率良く荷物を届けられる
コストを削減できる
ドライバーの負担を抑えられる
それでは順番に説明します。
メリット1. 効率良く荷物を届けられる
フィジカルインターネットは複数の物流会社がPIノードを通じて荷物をまとめて運べるため、現在の方法よりも効率性が高いです。
現在の物流システムは自社が依頼された荷物量のみを運んでいるので、トラックの荷台スペースに空きができてしまいます。
積載効率を大幅に向上できることから、物流会社の無駄をなくして配送効率アップも期待できます。
メリット2. コストを削減できる
フィジカルインターネットの物流システムを採用すれば、トラックの稼働台数をおさえられるので燃料費や人件費などのコストを削減できます。
稼働台数をおさえることができれば、物流会社が保有するトラックの台数を減らすことが可能です。
物流会社がコストを削減することに成功すれば、顧客に向けて新しいサービスを提供できるようになります。
結果として顧客からの満足度も向上するため、企業のブランディング向上にもつながります。
メリット3. ドライバーの負担を抑えられる
フィジカルインターネットなら一度に多くの荷物を配送できるため、ドライバーの負担を大幅に抑えられるようになります。現在の物流システムは、物流会社が依頼された分だけの荷物をトラックで運んでいるので、ドライバーが複数回に分けて運ばなくてはいけません。

こちらの方法ではドライバー1人に対する負担も増えてしまい、離職率の増加にもつながってしまいます。フィジカルインターネットの物流システムならトラックを少ない台数で稼働できるため、少ない人数で運用できるようになります。
問題になっているドライバーの長時間労働を解決できるため、フィジカルインターネットによって離職率の低下や環境の改善を期待できるでしょう。
フィジカルインターネットを導入するための課題
フィジカルインターネットを導入するには、インターネット通販による配送の増加やドライバー不足、CO2の環境問題などが課題となっています。現在ではスマートフォンやパソコンから手軽に商品を購入できますが、物流業界ではトラックの積載送料が減少する原因となります。
インターネット通販は小口配送が中心となるため、一度に多くの荷物を配送することが難しいです。ドライバーが配送先へ向かう回数が増えるので、積み下ろしの回数も増えてしまいます。ドライバーの負担が増えるにも関わらず、賃金が全体的に低いことから働き手が増えない結果となっているのです。
荷物を運ぶドライバーの人材不足が進むと、より負担が増える結果となって社会のライフラインに悪影響を及ぼしてしまいます。また、荷物を運ぶトラックの台数が多ければ、CO2の温室効果ガスを増やす結果となります。
しかし、こちらの課題は運送業界全体に広がるため、1企業が単独で解決することはできません。このような課題を踏まえて、フィジカルインターネットによる解決を目指すために政府は導入を進めています。
フィジカルインターネットを実現するためにやるべきこと
フィジカルインターネットを実現するためには、以下のようなやるべきことがあります。
情報共有システムを構築する
荷物の大きさを統一する
上記項目は1企業だけでなく、物流業界が全体的に取り組む必要があります。将来的に新しい物流システムを取り入れるためにも、ぜひ理解しておいてください。
情報共有システムを構築する

フィジカルインターネットを実現するには、トラックの積載量や倉庫の空き状況などの情報を企業間で共有しておく必要があります。そのためには運送業界が全体的に情報共有システムを構築し、管理体制を整えなくてはいけません。
情報共有がされていない状態で業務を進めると、急に荷物の追加があったときも対応が難しくなります。IoTやAI技術などを活用すれば、トラックや倉庫などの空き状況を可視化できます。
複数の企業がトラックや倉庫をシェアすることで、効率の良い物流ができるようになってドライバー不足やCO2の温室効果ガス増加などを解決できるのです。
荷物の大きさを統一する
フィジカルインターネットは物流効率を向上させるシステムであるため、物流会社は荷物の大きさを統一することも必要になります。荷物の大きさが統一されていなければ積載効率が悪くなるので、物流業界の課題解決が難しいです。
例えば、物流会社が取り扱うパレットやコンテナなどの物流資産を企業間で共有すれば、荷物の大きさを統一できるようになります。
現在では政府によって対策が進んでいるため、将来的には無駄のない配送ができるようになるでしょう。
フィジカルインターネットの導入事例
最後に、フィジカルインターネットが導入されている企業の事例をいくつか紹介します。
企業の導入事例を知ることで、どのような施策が必要なのか理解できます。ぜひ参考にご覧ください。
株式会社セブン-イレブン・ジャパン

株式会社セブン-イレブン・ジャパンは、大手コンビニチェーン店として展開されているローソン、ファミリーマートとの共同配送を実証試験として開始しています。
内容としては、コンビニチェーン店3社の商品を共同物流センターに集め、共同配送トラックを使ってエリア内のコンビニ全体へ配送する流れです。
一部の商品については、共同物流センターに残しながら店舗別にピッキングを実施しています。
ヤマトグループ総合研究所
ヤマトグループ総合研究所は、佐川急便株式会社との共同配送を長野県の一部地域で開始しました。主な流れとしては、佐川急便が荷物を請け負ってヤマト運輸に引き渡して配送しています。
顧客が佐川急便に依頼した荷物については、ヤマト運輸のセンターに集約してから佐川急便が回収・配送を行う流れです。
埼玉県の一部地域では、日本郵便や福山通運、西濃運輸を含めた運送会社が共同配送の試験を行なっています。
海外におけるフィジカルインターネットの事例
フィジカルインターネットは、国内だけでなく海外でも取り組みが進んでいます。ヨーロッパでは、2013年にロジスティクス分野による研究開発・イノベーション政策の意思決定を支援する目的で非営利団体が設立されています。
フィジカルインターネットのロードマップを策定し、各業界で普及できるように取り組みを進めているのです。
まとめ
今回は、フィジカルインターネットの詳細から物流業界のメリット、実現方法について詳しく解説しました。フィジカルインターネットは新しい物流システムとして注目を集めており、ドライバーの人材不足低下やCO2の排出量増加といった課題を改善できると考えられています。
また、効率良く荷物を届けられるだけでなく、コスト削減やドライバーの負担を軽減するなどのメリットもあります。
フィジカルインターネットをはじめるには運送業界全体の協力が必要になるため、国内の政府がサポートしながら近い将来の実現を目指しているのです。

