
サプライチェーンとは?導入するためのメリット・デメリットを徹底解説
「サプライチェーンがどういった概念なのか知りたい」
「サプライチェーンによってどのような効果があるのかわからない」
当記事は、このような悩みを持つ方に向けて書いています。
サプライチェーンは、製造メーカーや物流会社、小売業者などにとって重要な役割があります。しかし、普段は聞き馴染みがない用度であるため、サプライチェーンがどういった概念かわからない方もいるでしょう。
当記事では、サプライチェーンの詳細から導入するためのメリット・デメリットまで詳しく解説します。
サプライチェーンの意味をわかりやすく説明していくため、ぜひ参考にご覧ください。
目次[非表示]
- 1.サプライチェーンとは
- 2.サプライチェーンの仕組み
- 2.1.サプライチェーンの必要性
- 2.2.バリューチェーンとの違い
- 3.サプライチェーンにおける5つの課題
- 3.1.消費者ニーズの対応が必要
- 3.2.予想外のリスク対応が必要
- 3.3.グローバル化の対応が求められる
- 3.4.企業間の情報共有・連携
- 3.5.環境への配慮が必要
- 4.サプライチェーンマネジメントとは
- 4.1.ロジスティクスとの関係性について
- 5.サプライチェーンマネジメントを導入する5つのメリット
- 5.1.最適な在庫管理ができる
- 5.2.コストを削減できる
- 5.3.消費者のニーズを把握できる
- 5.4.生産性を向上できる
- 5.5.リードタイムの短縮が可能
- 6.サプライチェーンマネジメントを導入する3つのデメリット
- 6.1.企業間の統一が困難
- 6.2.運用コストがかかる
- 6.3.万が一のトラブル対策が必要
- 7.まとめ
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、製品の原材料や部品の調達をはじめ製造、在庫管理、配送、販売から消費までの流れのことです。
例えば1つの食料品を作って顧客のもとまで届けるためには、食材の調達から製造、在庫管理を経て、配送業者を通じて食料品店に届けて販売します。
サプライチェーンを管理し、全体の流れを最適化することをサプライチェーンマネジメントといいます。企業のなかにはSCM(Supply Chain Management)というシステムを導入しており、サプライチェーンに関連するメーカーや業者、販売店に在庫情報を共有しながら最適化を行なっています。
サプライチェーンの仕組み
サプライチェーンは「供給連鎖」とも呼ばれており、商品を提供することに関わる企業全体が理解しておかなくてはいけない概念です。
例えば家具を消費者に届ける場合、以下のような仕組みで商品が消費者に届けられています。
- 商品の原材料を調達:木材販売会社
- 商品の製造:家具職人・家具会社
- 在庫管理・発送:物流会社
- 販売:家具メーカー・家具屋
サプライチェーンは「モノ」、「お金」、「情報」の3点が流れとして組み込まれており、複数の企業が協力しながら進める必要があります。
製造した商品は消費者のもとへ届き、購入されたお金は生産会社へと流れます。商品の情報は原産地や製造会社、配送会社、小売業者へ共有されるため、全ての流れが重要となっているのです。
サプライチェーンの必要性
サプライチェーンの必要性は、商品が顧客のもとへ届くまでの流れを最適化することにあります。
例えば顧客から注文を受けた商品を製造する場合、原材料があるのか、製造の納期はいつまでか、配送にどれくらいの時間がかかるのかなどを理解しておく必要があります。
全体の流れを把握できていなければ、顧客から依頼を受けた商品を最適なタイミングで届けることはできません。顧客からの信用を失ってしまうと、会社としての売上低下にもつながってしまいます。
サプライチェーンマネジメントを導入すれば、原材料の数量や製造に必要な日数、在庫管理、発送日時などの情報を可視化できます。関連する企業全体に情報を共有できるため、計画的に商品を顧客のもとへ届けることが可能です。
企業によって取り扱う商品はさまざまですが、全体の循環率を向上させるためにもサプライチェーンは必要な概念となっているのです。
バリューチェーンとの違い
サプライチェーンと類似する用語として「バリューチェーン」があります。
バリューチェーンとは、企業の事業活動を価値創出するための一連の流れを指します。原材料の調達や製造、物流、販売をする流れを把握する点では同じですが、バリューチェーンは自社のみのプロセスを最適化する概念です。
サプライチェーンは複数の企業が関係しているため、バリューチェーンとは意味が少し異なります。そのためバリューチェーンは自社の流れ、サプライチェーンは複数の企業の流れを焦点を当てた概念であると理解しておきましょう。
サプライチェーンにおける5つの課題
サプライチェーンにおける課題として、以下のような5点が挙げられます。
- 消費者ニーズの対応が必要
- 予想外のリスク対応が必要
- グローバル化の対応が求められる
- 企業間の情報共有・連携
- 環境への配慮が必要
それでは順番に説明します。
消費者ニーズの対応が必要
サプライチェーンによって安定した売上を出すためには、消費者ニーズに対応する必要があります。
消費者が商品に求める要望を分析・調査し、品質向上や付加価値をつける取り組みを実施しなければいけません。ただし、サプライチェーンは複数の企業が関係を持って進めるため、消費者ニーズよりも企業間の利益が重視される傾向にあります。
閉鎖的なサプライチェーンになってしまうと、消費者ニーズの分析・調査が難しくなり生産性が低下する原因になります。利益獲得の機会を失ってしまうので、サプライチェーンを実施するには企業間で消費者ニーズを情報共有して対策方法を考えることが大切です。
予想外のリスク対応が必要
サプライチェーンを実施する場合、予想外のリスクに対応することが課題の1つとして挙げられます。
代表的な例でいうと、世界的に流行したコロナウイルス(COVID-19)はサプライチェーンに悪影響を与えて商品の製造や配送に遅延が発生しました。
理由としてロックダウン(特定地域への移動ができない状況)によって、小売業者のもとへ商品を届けられずサプライチェーンの混乱が起きたことが大きな要因です。
国内においても4割程度の企業が商品を減産させることになり、売上低下になりました。
ほかにも自然災害や経済動向などもサプライチェーンの流れに悪影響を及ぼすため、企業間でリスクを想定した対策をすることが重要となるでしょう。
参考URL:サプライチェーンの強靱化に向けた課題|内閣府
グローバル化の対応が求められる
国内では、サプライチェーンを機能させるための人材不足が深刻な課題となっています。日本は少子高齢化が進んでおり、多くの業界・業種で人手が足りていない状況です。
商品を消費者のもとへ届けるには原材料の調達から製造、在庫管理、配送、販売などの人材が必要になるため、人材不足を改善する対策を考えなくてはいけません。国内企業のなかには、人口が多い海外にサプライチェーンの拠点を置いている会社もあります。
海外の法令や文化を把握し、グローバルな連携を取ることができれば人材不足の課題に対応できるようになるでしょう。
企業間の情報共有・連携
サプライチェーンの生産性を向上させるためには、企業間で情報を共有する必要があります。しかし、サプライチェーンの構築に関わる各企業は自社の利益向上を目的としているため、企業間の情報共有が十分ではありません。
商品の在庫状況や生産計画などの情報が企業間で共有されていなければ、担当する企業がどれくらいの需要率があるのか把握できなくなります。商品の依頼が多くなるほどトラブルが起きやすいので、サプライチェーンマネジメントを活用しながら企業間の情報共有を行う必要があるでしょう。
環境への配慮が必要
サプライチェーンを実施するには、環境への配慮を考える必要があります。
例えば商品の発送にはトラックが必要になるため、台数が増えるほど二酸化炭素(CO2)や、一酸化炭素(CO)などの汚染物質を多く排出することになります。
商品の原材料を増やすためには、世界的に汚染物質の排出量削減が課題となるのです。とくにグローバルなサプライチェーンを持続させるためには、環境に配慮した取り組みを企業全体で考える必要があるでしょう。
サプライチェーンマネジメントとは
サプライチェーンマネジメントとは、サプライチェーンの流れを管理・最適化する取り組みを指します。
原材料の調達から製造、物流、販売の一連の流れを管理することで、生産性を向上させて効率良く消費者のもとへ商品を届けられます。
商品の売上・販売実績などの情報を共有すれば、消費者のニーズを予測したうえでサプライチェーンを実施することが可能です。各企業が連携を取りやすくなるため、安定したサプライチェーンの構築ができるでしょう。
ロジスティクスとの関係性について
ロジスティクスとは、商品の調達から製造、配送、販売までの流れを1つの企業が管理する方法論です。
物流は商品を供給者から需要者へ移動する活動を指しており、ロジスティクスは全体の最適化を行う概念となっています。サプライチェーンマネジメントは企業間での管理に関する概念であるため、ロジスティクスとは異なります。
サプライチェーンマネジメントを導入する5つのメリット
サプライチェーンマネジメントを導入することで、以下のような5つのメリットを得られます。
- 最適な在庫管理ができる
- コストを削減できる
- 消費者のニーズを把握できる
- 生産性を向上できる
- リードタイムの短縮が可能
それでは詳しく解説します。
最適な在庫管理ができる
サプライチェーンマネジメントを導入すれば、商品の発注数・受注数や在庫数などの情報を企業間で情報共有できます。最適な在庫管理ができるようになるため、原材料の調達や商品の製造による在庫削減につながります。
商品の在庫状況によって進められるので、不要な在庫を保管する必要がありません。企業間で最適な在庫管理ができる点は、サプライチェーンマネジメントを導入するメリットの1つです。
コストを削減できる
サプライチェーンマネジメントによって商品の在庫情報を共有すれば、企業間でコストの削減が可能です。消費者の需要率を予測することで、過剰な商品の製造を抑えて在庫数が増えるリスクを減らせます。
例えば納品先の仕入れ情報を参考にしながら、納品者が自動補充する仕組みを構築すれば業務効率が大きく向上します。商品の製造や配送に関わる企業コストを削減できるため、サプライチェーンマネジメントの導入はメリットが大きいでしょう。
消費者のニーズを把握できる
適切なサプライチェーンマネジメントを行うことで、消費者のニーズを把握できるようになります。製造会社や物流会社、販売業者の情報を集めて分析をすれば、消費者が商品をどれくらい求めているのか把握できます。
企業間で消費者のニーズを理解しておくことで、状況に合わせて柔軟な対応が可能です。また、受注数の多い商品を把握すれば、新商品を開発するときの参考にもなります。
そのため需要率が高い商品を安定して供給できる点は、サプライチェーンマネジメントのメリットの1つといえるでしょう。
生産性を向上できる
サプライチェーンマネジメントによって在庫管理やコスト削減ができれば、企業間の生産性を大きく向上できます。商品の在庫数やニーズによって最適な人材配置ができるようになるため、企業のリソースを最小限に抑えながら生産可能です。
例えばクリスマスやバレンタインといったイベント用の商品を販売する場合、企業間で需要率を予測したうえで原材料の調達や製造、配送、販売ができるようになります。生産性を向上できる点は、企業の利益率をアップできる点においても良いメリットです。
リードタイムの短縮が可能
商品の売上・販売実績の情報を企業間で共有すれば、全体のリードタイムを大幅に短縮できます。市場の需要に合わせてスピーディに商品を供給できるため、販売機会の損失が発生するリスクを減らせます。
また、リソースが過剰・不足になっている部分があれば、削除や追加なども柔軟に対応可能です。リードタイムを短縮すれば消費者のもとに商品を最短で届けられるので、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
サプライチェーンマネジメントを導入する3つのデメリット
サプライチェーンマネジメントを導入するには、以下のような3つのデメリットも存在します。
- 企業間の統一が困難
- 運用コストがかかる
- 万が一のトラブル対策が必要
導入するには、良い点だけでなく悪い点も理解しておく必要があります。導入後のトラブルにならないためにも、ぜひチェックしておいてください。
企業間の統一が困難
サプライチェーンマネジメントを実施するには、企業全体で情報共有をすることが大切です。しかし、企業によって方針や文化が異なるため、全体が方向性を統一することは難しいです。
また、社内で部門が独立している場合、意識改革に取り組む必要があります。各企業が適切な連携を取るためにも、担当者はコミュニケーションを取りながら意識を統一する施策を考えなくてはいけません。
運用コストがかかる
サプライチェーンマネジメントのシステムを導入するためには、ITコストなどの費用が必要になります。企業の規模によって必要な運用コストは変動し、導入を定着させるまでには長い時間がかかります。
また、導入後もシステム管理の人材やITツールにコストがかかるので、担当する企業は予算を確保しておかなくてはいけません。システム管理のノウハウがないときは人材教育も必要になるため、そちらの費用も考慮しておきましょう。
万が一のトラブル対策が必要
サプライチェーンマネジメントでは、自然災害や製造環境のトラブルなどが発生することもあります。トラブルを防止するための対策を考えておかなければ、サプライチェーンがうまく機能しなくなってしまいます。
各企業が市場の動き、消費者のニーズなどを常に情報共有しておくことで、スピーディにトラブルへ対応可能です。そのためにも、サプライチェーンに関わる企業は常に最新の情報を全体へと共有しておきましょう。
まとめ
今回は、サプライチェーンの詳細から導入するためのメリット・デメリットまで詳しく解説しました。
サプライチェーンは、原材料の調達から製造、在庫管理、配送、販売から消費までの流れを指します。サプライチェーンマネジメントを取り入れることで、各企業と協力しながら商品を効率良く消費者のもとへ届けられます。
商品のニーズに合わせて調達や製造、配送、販売をおこなえるため、各企業にとってメリットが大きいです。商品の循環率を最大化させるためにも、ぜひサプライチェーンの概念を取り入れてみましょう。