
運送業の今後|なくなるのか?抱える課題と解決に向けた対策を解説
こんにちは。物流に関する知識をまとめたメディア「ピックゴー物流コラム」編集部です。
近年、自動運転の普及が進み「運送業のドライバーの仕事がなくなるかもしれない」と不安になっていませんか?
結論から言うと、運送業のドライバーの仕事がなくなる時代はまだまだ先になるでしょう。
この記事では、運送業のドライバーの仕事がなくならない理由を紹介します。
目次[非表示]
運送業がなくなる懸念の由来と実際
運送業がなくなると懸念されているのはなぜでしょうか?
以下の3つの理由と、その実態について紹介します。
- 自動運転トラックによる運送を目指している
- ドローン活用の物流への拡大が見込まれる
- AI活用での効率化により必要人員が少なくなる
自動運転トラックによる運送を目指しているから
運送業に自動運転システムが導入されれば、ドライバー職の需要は確実に現在より減少します。このように技術が進歩しつつある影響で、運送業のドライバーは危機感を覚えているようですが、実際にはそれほどスムーズにいきません。
「自動運転の精度」や「自動運転のトラックが走行するうえでの法整備」など、解決すべき問題が残されています。そのため、現段階で急に仕事がなくなることはないので安心できます。
ドローン活用の物流への拡大が見込まれるから
近年、さまざまな分野にドローンが導入されています。もちろん運送業界でも注目されており、大手運送会社や国土交通省などの省庁も導入を検討しています。
しかし、こちらも簡単ではありません。荷物の配送自体はドローンでできますが、ドローンに関する法整備は進んでいないというのが現状です。万が一墜落した場合の責任のありかや、悪天候への弱さといった問題が山積みになっています。このことから、「急に運送業のドライバーの仕事をドローンが奪う」ということはありません。
AI活用での効率化により必要人員が少なくなるから
AI技術の進歩により、ありとあらゆる分野の仕事を任せられるようになってきています。実際にAIが成果を出している分野も増えており、人件費の削減効果に期待が高まっています。
しかし、運送業の場合はこちらも簡単にはいきません。現在、運送業では「運行管理者」が配送ルートの管理や顧客管理などを担っています。この業務も効率化することで負担を減らせますが、「運行管理者の配置が法的に義務づけられている」ため、AIが取って代わるということが難しい状況です。
今後もあり続ける運送業界の課題|解決が急務
運送業界が今後もあり続けるためには、今ある課題と向き合う必要があります。
そこで、以下の3つの課題とその実態について紹介します。
- 慢性的なドライバー不足
- 働き方改革関連法の影響で生じた2024年問題
- 通販市場急成長による業務増加
慢性的なドライバー不足
近年、運送業の就業者年齢の高齢化は深刻な状態です。総務省の調査によると、2010年から2021年までの年齢別就業者割合が、20代と40代は横ばい、30代は減少傾向、50代から60代以上は増加傾向にありました。
就業者数の推移は2010年から2021年まで横ばいで、就業者数が増えることなく高齢化が進行しています。所得に関しても全産業平均と比べ、大型トラックドライバーが約5%、中・小型トラックドライバーが約12%低い水準です。これからの運送業の経営者は若年労働力を増やすために、所得改善という課題と向き合う必要があります。
2024年問題
現在、他業界では働き方改革関連法がすでに施行されていますが、運送業に関してはすぐに対応するのが困難ということもあり、2024年まで猶予されています。働き方改革関連法では、運送業の企業が36協定を締結したうえで年間時間外労働時間が960時間に制限されます。
厚生労働省の2020年の調査では、時間外労働時間が「4〜7時間超」になる就業者が就業者全体の2割弱を占めました。この就業者たちは年間の上限となる960時間を超えてしまう計算になり、2024年以降は労働時間の制限対象になります。足りない労働力を他の人材で補うことになりますが、運送業はすでにドライバー不足という課題を抱えています。
通販市場急成長による業務増加
コロナ禍も追い風となったEC需要の増加によって、ドライバー不足の運送業の需要も増加する一方です。2017年のボストンコンサルティンググループの調査では運送業は「2027年に24万人の労働力不足に陥る」との調査結果が発表されています。
経済産業省の調査では、2010年から2019年までのEC市場の伸び率は順調な右肩上がりです。BtoCの伸び率は6.76%ですが、運送業の就業者の増加率は横ばいのため、需要に対して労働力が足りていません。運送業がドライバー不足のままで需要と供給のバランスを取れなければ、国民経済が後退していく原因となります。日本経済を豊かにしていくためにも、運送業の経営者は課題解決へ向けて対策をする必要があります。
課題解決に向けて運送会社が取り組みたい対策
運送業は、国民の生活に必要不可欠な物流を担う重要なポジションです。
そのため、運送業の経営者はドライバー不足や長時間労働などの課題解決に向けて取り組む必要があります。
そこで、以下の2つの対策を紹介します。
- DXの推進
- 働き方改革の推進
DXの推進
運送業の「ドライバー不足」「長時間労働問題」「ドライバーの高齢化」を解決するための対策として、DXの推進が挙げられています。しかし、株式会社ドコマップジャパンのアンケート調査によると、DXが十分に進められている運送業の企業は1割程度です。
スマート物流を導入すれば、ドライバーの労働時間を減らすことができます。さらに、ドローンやAIを活用することで「ドライバー不足の解消」「長時間労働の解消」「配送のコストカット」のような効果を見込めます。
DXによる効率化によって運送業の抱える課題に対応できることに加え、運送業の競合他社との差別化にもつながるので、早い決断を求められます。
働き方改革の推進
運送業の経営者は「2024年問題」に向けて多くの取り組みが必要です。
ドライバー不足や若い労働力不足の状況改善として「賃金など待遇の見直し」「女性や高齢者でも働きやすい環境づくり」「キャリアパスの明示」など、労働者にとって安心して業務に専念できる状態をつくることが求められます。
一般消費者や荷主に向けては「燃料費変動の影響を受けての運賃の見直し」「待機時間などによる負担の軽減」を求めることが必要です。
悪質な企業の根絶のために、運送業の経営者は法令遵守に取り組む必要があります。
運送業で生き残るために課題解決に取り組もう
運送業はなくなるどころか、需要が右肩上がりで上昇を続けています。しかし「ドライバー不足」「長時間労働」「高齢化」など、多くの課題を抱えたままです。DXを活用して自社の課題を改善していくことで、運送業の中で生き残ることが可能になります