
ホワイト物流とは?取り組み事例と参加方法、メリット・注意点は?
こんにちは。物流に関する知識をまとめたメディア「ピックゴー物流コラム」編集部です。
トラックドライバーの人手不足や高齢化、2024年問題などさまざまな課題を抱える物流業界。これらの課題を解決し物流機能を安定的に確保するために、国が推進している「ホワイト物流」という取り組みをご存じでしょうか。
そこで今回は、ホワイト物流の基礎的な知識や参加方法、実現のメリット、注意点などを解説します。具体的な取り組み事例にも触れますので、ホワイト物流の実現に向けて自社にできることを確認しましょう。
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ホワイト物流とは?

ホワイト物流は、物流事業者が抱えるさまざまな問題点を解決に導く取り組みです。ここではホワイト物流の意味や参加方法などについてわかりやすく解説します。
ホワイト物流の概要
ホワイト物流とは物流業界における健全で安心して働ける労働環境の実現を目指す取り組みのことです。トラック運転者不足が深刻化していることを受け、2019年(平成31年)にスタートしました。正式名称は「ホワイト物流」推進運動で、国土交通省が主体となり経済産業省や農林水産省と連携して取り組んでいます。
ホワイト物流の目的は、「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」と「女性や60代の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現」の2つです。2022年(令和4年)9月30日時点で1,472社が同運動に賛同を表明しています。
【出典】「賛同企業リスト」(「ホワイト物流」推進運動)
https://white-logistics-movement.jp/list/
ホワイト物流推進運動への参加方法
STEP1:「自主行動宣言」の必須項目への賛同を表明する
まずは、運動の趣旨を理解したうえで必須項目への賛同を表明しましょう。必須項目は「取組方針」「法令遵守への配慮」「契約内容の明確化・遵守」の3つです。
「取組方針」には、物流企業が直面している課題を認識したうえで、ホワイト物流の実現に向けて関係者と協力しながら取り組む旨が掲げられています。次に「法令遵守への配慮」では、取引先の物流事業者が関係法令を遵守できるよう必要な配慮を行う意思を表明します。また「契約内容の明確化・遵守」では、運送以外の業務に関する契約内容を明確にし遵守することが求められます。
STEP2:任意で取り組む項目を選定する
次は必須項目を踏まえたうえで、自社でさらに取り組む内容を具体的に決定します。ポータルサイトに挙げられている推奨項目を参考にすると良いでしょう。具体的には、パレット等の活用や運転以外の作業部分の分離、運送契約の書面化の推進などがあります。また、自社の状況に応じて独自に取り組み内容を設定することも可能です。
STEP3:書類を作成して事務局へ提出する
最後にポータルサイトから「自主行動宣言様式フォーマット」をダウンロードし、上記事項を記入したうえで事務局へ提出しましょう。その後、必須項目に賛同した旨が企業名とともに公表されます。任意項目に関する公表は各社に任されており、適宜内容を変更することも可能です。
ホワイト物流が求められる背景

物流業界は、トラック運転者の人材不足や物流コストの増大などさまざまな課題を抱えています。こちらではホワイト物流が求められる背景を解説します。
ドライバーの人手不足
トラックドライバーは激務や重労働のイメージが強く、就職先として選ばれにくい傾向にあります。そのため、慢性的なドライバー不足を抱えている現場が多いのが現状です。
実際、トラック運転者の欠員率は2022年8月時点で4.8となっており、全産業平均の2.9を上回っています。また2021年3月の有効求人倍率は、全職業平均が0.94なのに対し、貨物自動車運転手は1.88と2倍高い数字です。ホワイト物流の実現による人手不足の解消が急務となっています。
【出典】「労働経済動向調査(令和4年8月)の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2208/dl/4kekkagaiyo.pdf
【出典】「統計からみるトラック運転者の仕事」(厚生労働省)
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/national/index.html
少子高齢化
物流現場では人手不足とともにドライバーの高齢化も進んでいます。厚生労働省の調査によると、トラック運転者の平均年齢は大型トラックで49.4歳、中小型トラックで46.4歳と、どちらも全産業平均の43.2歳を上回っています。就業者に占める女性の割合も低く、物流業界の健全な発展には若者や女性が働きやすい職場を実現する必要があるでしょう。
【出典】「統計からみるトラック運転者の仕事」(厚生労働省)
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/national/index.html
長時間労働の常態化
物流業界では長時間労働が常態化しているのも課題です。トラック運転者の年間労働時間は、大型トラックで2,532時間、中小型トラックで2,484時間となっており、全産業平均の2,100時間を大きく上回っています。これは人手不足だけでなく荷待ち、荷役の発生による拘束時間の長期化が主な原因とされます。そのため、ホワイト物流の推進による荷待ち時間の解消や荷役の負担軽減が重要です。
【出典】「統計からみるトラック運転者の仕事」(厚生労働省)
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/national/index.html
ホワイト物流の取り組みの具体例

ホワイト物流の実現に向けて企業にはどのようなことができるのでしょうか。こちらでは4つの項目に分けて取り組みの具体例をご紹介します。
荷待ち時間の削減に関する取り組み例
荷待ち時間とは荷主や物流センターの事情でドライバーが待機している時間を指します。荷待ち時間は、トラック予約受付システムの導入によって解消するのがおすすめです。
トラック予約受付システムとはトラックドライバーが手元の端末から倉庫への到着時間を事前に予約できるシステムのこと。待ち時間なく積卸が可能になり、トラックの稼働率向上や長時間労働の是正に役立ちます。予約状況に合わせて庫内作業の計画を立てることができ、荷主や倉庫業者にもメリットがあります。
また入出荷時の検品作業の効率化に取り組み、荷待ち時間の削減を実現するのも良い方法です。ハンディターミナルとRFIDやバーコードを組み合わせることで検品作業の手間を削減でき、荷待ち時間の短縮につながります。
荷役作業の負担軽減に関する取り組み例
荷役作業の負担を軽減するには、パレットやフォークリフトなどのマテハン機器を活用する方法が効果的です。人力の場合と比べて作業効率がアップし、荷役作業の肉体的負担も抑えやすくなります。また、荷役作業の補助や体への負担を軽減する器具なども登場しています。
物流の生産性向上に関する取り組み例
物流の生産性を向上させる取り組みでは、モーダルシフトが注目されています。モーダルシフトとはトラックが使用されている貨物輸送の一部を船舶や鉄道などの輸送方法に切り替えることを指します。トラックで転換拠点まで荷物を運び、輸送手段を船舶や鉄道に切り替えて目的地まで配送する方法が一般的です。
モーダルシフトを活用することで少ない労働力で大量の荷物を運べるようになり、物流生産性のアップが期待できます。また環境負荷の低減や道路の混雑解消、人手不足の解消などのメリットもあります。
入荷作業の効率化に関する取り組み例
入荷作業の効率化は、トラック予約受付システムの導入や納品日の集約で図りましょう。いずれも荷主企業と納品先企業の連携が欠かせません。
そのほかには、ABC分析を活用した倉庫内レイアウトの見直しやフリーロケーションへの対応などの方法も効果的です。ABC分析とは荷物を売上高や在庫量ごとに分類する手法のことで、倉庫内を整理する場合は出荷頻度の高い荷物から取り出しやすい位置に配置します。これにより入荷作業時に荷物を探す手間を省くことができ、作業の効率化につながります。
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ホワイト物流を実践するメリットと注意点

ホワイト物流に取り組む企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。こちらでは注意点と併せてご紹介します。
メリット
生産性の向上や安定的な物流の確保につながる
ホワイト物流の取り組みによって物流現場の負担が軽減され、働きやすい環境を構築できるため、生産性の向上や安定的な物流の確保が期待できます。人手不足問題も解消しやすくなり、事業成長の加速や利益の向上も見込めるでしょう。
企業イメージのアップが期待できる
ホワイト物流の取り組みに賛同する企業として国土交通省から公表されるため、外部からのイメージアップにつながります。人材を雇用する際の企業のアピールポイントとして活用でき、物流業界の働き方に不安を感じている方にも選ばれやすくなります。
二酸化炭素の排出量を削減できる
物流の効率化に取り組むことで使用するトラックの台数を減らせるため、二酸化炭素の排出量を削減できるのもメリットです。先に挙げたモーダルシフトでは、鉄道や船舶などの輸送手段のほうがトラックと比べて二酸化炭素の排出量を抑えられる傾向にあります。そのほかには、共同配送の実現や輸送網の集約などによって環境負荷を低減することが可能になります。
SDGsに関する取り組みにも貢献できる
SDGsとは2015年に国連サミットで採択された、世界的に達成すべき目標のことです。ホワイト物流と直接の関係はないものの、女性の活躍の推進や労働環境の整備など共通する目標が多く設定されています。そのため、ホワイト物流の実現を目指すことで自動的にSDGsに関する取り組みにも寄与でき、社会貢献度の高い企業として注目されるでしょう。
注意点
ホワイト物流の取り組みでは、物流コストやリードタイムの増加が懸念されます。ホワイト物流の実現に向けて運送契約の見直しを行ったり、輸送手段を変更したりするためです。
また、物流プロセスに関わるあらゆる企業の協力が必要になる点にも注意しましょう。具体的には、荷主企業や運送会社、取引先、関連企業などと連携して適切な方法で取り組む必要があります。
ホワイト物流を理解して物流改善や効率化を実現しよう

今回はホワイト物流の概要やメリット、取り組み事例などについてお伝えしました。ホワイト物流は、業界が抱える課題を解決し、物流機能を維持・発展させるために必要な取り組みです。この機会にホワイト物流に関する理解を深め、物流改善や効率化を実現しましょう。
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